2018年度の行政書士受験生の皆様、こんにちは。
資格の大原で行政書士講座を担当しております松井です。
今回は「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」についてのお話です。
経済産業省は、電子商取引及び情報財取引等に関する法的問題点について、民法をはじめとする関係法令がどのように適用されるのか、その解釈を示すこと等を目的として、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を策定、公表しています。
経済産業省は、この準則を改訂するに当たり、改訂案についてのパブリックコメント(意見公募)の手続を実施しました。
AIスピーカーを利用した電子商取引に関連する問題点の議論をご紹介しましょう。
AIスピーカーとは、対話型の音声操作に対応したAIクラウド(AIスピーカーから送信されたユーザーの指示に従った処理を行うもの)に接続することで、情報検索や音楽再生等の操作が可能なスピーカーです。
ところで、発注者が「タイヤ」を注文しようとして「ダイヤ」と言い誤ってしまった場合、発注者には民法95条による錯誤無効の主張が認められるのでしょうか?
この場合、発注者による注文の意思表示は存在していますが、表示の錯誤(言い間違え)があるので、発注者は、民法 95 条本文に該当し契約は無効であると 主張することが可能である、と改訂案では示されています。
これに対し事業者は、発注者に重大な過失があるとして発注者は契約の無効を主張することができないと反論することが考えられます(民法95条但書)。
しかし、一般的に言い間違えは誰にでも生じ得ることから、一度の言い間違えでそのまま発注がなされてしまうような発注システムであれば、言い間違えに重過失があるとされる可能性は低いと改訂案で述べられています。
発注者が消費者の場合に、電子消費者契約法による規律が及ぶのではないか、との問題があります。
「電子商取引」とはインターネットショッピングのことです。
電子消費者契約法には、消費者保護のため、電子消費者契約においては、重過失がある消費者も錯誤無効の主張ができるという民法95条の特則があるのです。
しかし、電子消費者契約法では「電子消費者契約」とは「映像面を介して 締結される契約であること」を前提としているので、取引が AI スピーカーによる消費者からの音声での発注で完結する仕組みの場合は、契約は同法の「電子消費者契約」には該当せず、同法による規律は及ばないと改訂案では示されています。
いかがでしょうか?
ありがとうございました。