本試験問題にチャレンジ!
こんにちは。資格の大原行政書士講座専任講師の松井です。
このコーナーでは、過去の行政書士試験で出題された問題をピックアップしてご紹介しています。
記事の後ろの方に解答と解説を載せますので、クイズ感覚でチャレンジしてみてください。
前回は憲法改正についてのお話でしたので、今回は「統治機構」をテーマにして一緒に学習したいと思います。
では、次の問題にチャレンジしてみてください!
■■■ 平成20年 問題5 ■■■
国家機関の権限についての次のア~エの記述のうち、妥当なものをすべて挙げた組合せはどれか。
ア 内閣は、実質的にみて、立法権を行使することがある。
イ 最高裁判所は、実質的にみて、行政権を行使することがある。
ウ 衆議院は、実質的にみて、司法権を行使することがある。
エ 国会は、実質的にみて、司法権を行使することがある。
1 ア・ウ
2 ア・イ・エ
3 ア・ウ・エ
4 イ・ウ・エ
5 ア・イ・ウ・エ
いかがでしょうか?
この問題は、ア・イ・ウ・エの選択肢の全てが妥当であり、5番が正解肢となります。
この問題は、内容が抽象的ですね。
そして、全てが妥当であるという決断をするのはとても勇気が必要ですね。
文末が「~ことがある。」と書いてありますと、受験生の心理としては「きっと何かあるだろう・・・」とは思いますが、それが何かがわからないと自信を持って次の問題に進めないですよね。
それがこの問題を難しくしていますね。
でも、統治機構の理解を試す問題としてはとても良い問題です!
選択肢のアについてです。「実質的にみて、立法権を行使することがある」とあるのでこの立法権を「ルール作りをする権限」と考えてみてはどうでしょうか?
内閣が作れるルールといえば・・・そうです!「政令」ですね(憲法73条六号)。
ですからアは正しい肢とわかります。
同様に「司法権」を「裁判を行う権限」と考えますと議院は「議員の資格に関する争訟を裁判」することができます(憲法55条)から、ウは正しい肢とわかります。
国会も「罷免の訴追を受けた裁判官を裁判」することができます(憲法64条1項)から、エも正しい肢とわかります。
イは少々、難しいかもしれませんね。
行政権という言葉の定義も国家権作用から立法作用と司法作用を除いた残りの全ての作用(通説)とされているのでハッキリしませんよね・・・。
この行政権とは司法行政権、つまり裁判所の運営・管理上の監督権を意味しています(裁判所法80条)。下級裁判所および裁判所職員を監督する司法行政監督権といいます。
以上より、ア・イ・ウ・エは全て妥当な肢といくことになります。
こちらも考えてみよう!
では、次の問題も頑張って考えてみてください!
■■■ 平成17年 問題7 ■■■
次の事項に関連して、日本国憲法および公職選挙法が予定する裁判作用とその担い手の組合せとして、正しいものはどれか。
A 国会議員の資格をめぐる裁判 a 議院
B 国会議員の選挙の効力をめぐる裁判 b 国会
c 裁判所
1 A-a B-b
2 A-b B-c
3 A-c B-a
4 A-a B-c
5 A-b B-a
いかがでしょうか?
この問題は同じ「裁判」という用語を使いながら、裁判を担当者が異なるという観点から出題されたものです。
正解肢は「4」です。
Aの国会議員の資格をめぐる裁判は「議員の資格に関する争訟を裁判」するものでしたね(憲法55条)。この制度は議院の自律権の保障という趣旨から制定されているものです。
次にBです。
こちらは衆議院議員又は参議院議員の選挙において、その選挙の効力に関し異議がある選挙人又は公職の候補者は、当該選挙の日から30日以内に、高等裁判所に訴訟を提起することができる(公職選挙法203条)という条文がありますので、担い手は「裁判所」です。
いかがだったでしょうか?
平成20年の問題も平成17年の問題もどちらも、例えば「内閣は政令を制定することができますか?」とか、「国会は弾劾裁判所を設けることができますか?」と問われればすぐにわかるのだと思います。
でも試験ではそのような親切な出題はしてくれませんので、このような問題から出題者の意図を探りましょう。
合格への最短学習法ですよ!