令和2年分の「給与所得者の扶養親族等申告書」又は「公的年金等受給者の扶養親族等申告書」に『単身児童扶養者』の表記が追加されました。
今回は、その内容について説明させていただきます。
1.個人住民税の非課税制度の改正の内容及びその背景
個人住民税の計算では、障害者、未成年者又は寡婦(夫)で前年の合計所得金額が135万円以下(令和元年以前は125万円以下)である場合には、非課税の適用があります。
消費税の増税などもあり、一人親にとっては、益々厳しい状況になってきますが、シングルマザーやシングルファザーで寡婦(夫)の要件に該当しない人は、この非課税の適用を受けることができませんでした。
そこで、一人親の子どもの貧困に対応するために、平成31年度の税制改正で、『単身児童扶養者』もこの個人住民税の非課税の規定に加わることとなりました。
この規定は、令和3年1月1日以後の個人住民税から適用されます。
2. 単身児童扶養者とは
『単身児童扶養者』は、児童扶養手当※の支給を受けている者のうち、婚姻をしていない者等が該当します。
※児童扶養手当とは、一人親家庭に対する子育て支援としての援助金(2019年4月以降は子1人の場合に最大で42,910円/月)で、児童手当とは異なります。
3.令和2年分の給与所得者の扶養控除等申告書
給与所得者の源泉徴収については、扶養親族の数などに基づき、給与所得者の源泉徴収税額表で算出します。
(給与所得者の源泉徴収税額表)
→ https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2018/data/01-07.pdf
ここで必要な扶養親族等の情報を「給与所得者の扶養控除等申告書」で集めますので、「給与所得者の扶養控除等申告書」は、毎年その年最初の給与の支払いをする日の前日までに、給与の支払者を経由して税務署に提出するものとなります。
実際は給与の支払者が保管しています。
「給与所得者の扶養控除等申告書」には、住民税に関する事項の記載欄もあります。
ここには、所得税の計算では使用しないですが、個人住民税の計算で使用する「16歳未満の扶養親族」や「単身児童扶養者」に関する内容を記載することになっています。
なお、個人住民税は、所得税の申告書などの資料を元に市区町村が賦課徴収する税金ですので、所得税の計算に対して1年遅れで計算することとなっています。
そこで、令和3年1月1日以後の個人住民税から適用される資料を令和2年分の給与所得者の扶養控除等申告書で集めることになっています。
『単身児童扶養者』は、『寡婦(夫)』の要件に該当する人が多いですが、『単身児童扶養者』の方が適用要件の範囲が広く、未婚の親や離婚できない親も該当することとなります。
しかし、「寡婦(夫)」の定義が改正されたわけではありませんので、『単身児童扶養者』に該当しただけでは、所得税の寡婦(夫)控除(27万円又は35万円の所得控除)の適用を受けることはできません。
「寡婦(夫)」と『単身児童扶養者』のいずれにも該当する場合には、「寡婦(夫)」のみにチェックを入れれば、住民税の非課税の適用も受けることができます。