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本試験問題にチャレンジ!

こんにちは。

資格の大原行政書士講座専任講師の松井です。

このコーナーでは、過去の行政書士試験で出題された問題をピックアップしてご紹介しています。

記事の後ろの方に解答と解説を載せますので、クイズ感覚でチャレンジしてみてください。


■■■ 平成26年 問題7 ■■■

法令相互の関係に関する次の記述のうち、妥当なものはどれでしょうか。

1 刑罰の制定には法律の根拠が必要であるから、条例で罰則を定めるためには、その都度、法律による個別具体的な授権が必要である。

2 国会による条約の承認には、予算と同様の衆議院の優越が適用され、法律の議決の方がより厳格な手続を要するので、条約の国内法的効力は、法律に劣る。

3 法律の委任がなければ、政令によって国民に義務を課し、もしくはその権利を制限することはできないが、緊急の必要がある場合、国会の事後の承認を条件に、そのような定めを政令で行うことは、必ずしも違憲とはいえない。

4 最高裁判所は、裁判所の内部規律・司法事務処理に関し規則を制定することができるが、訴訟手続や弁護士に関する定めは法律事項であるから、規則で定めることはできない。

5 憲法は両議院に対し自律権を認め、議院内部の事項について自主的に議事規則を定める権能を付与しているが、国会法は、両議院と政府等の関係や議院相互の関係にとどまらず、議院内部の事項をも規定している。


本試験問題にチャレンジ!の解答・解説

平成26年度 問題7 正解5

1× 判例は、「条例によって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておれば足りる」としています(最大判昭和37.5.30)。

よって、本肢のように「条例で罰則を定めるためには、その都度、法律による個別具体的な授権が必要である」とはいえません。

2× 憲法98条2項は、わが国において、条約は批准・公布によりそのまま国法の一形式として受け入れられ、特段の立法措置を待つまでもなく
国内法関係に適用され、かつ、条約が一般の法律に優位する効力を有することを定めているとされています(徳島地判平成8.3.15参照)。

よって、本肢のように「条約の国内法的効力は、法律に劣る」とはいえません。

3× 本肢のような「緊急の必要がある場合、国会の事後の承認を条件に、そのような定めを政令で行うこと」を認める規定は、憲法上存在しません。

よって、本肢のように「必ずしも違憲とはいえない」とはいえません。なお、内閣法は、政令には、法律の委任がなければ、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができないとしています(内閣法11条)。

4× 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有します(憲法77条1項)。

よって、本肢のように「訴訟手続や弁護士に関する定めは法律事項である」とはいえません。

5○ 本肢の通りです。

憲法は、両議院に対し自律権を認め、議院内部の事項について自主的に議事規則を定める権能を付与しています(憲法58条2項)。

また、国会法は、両議院と政府等の関係や議院相互の関係にとどまらず、議院内部の事項をも規定しています(国会法103条以下)。

本問は「法令相互の関係」という大きなテーマで憲法の総合的な理解を問う難しい問題です。ただ、肢の3、4、5で問われているのは条文の内容です。

肢の1は受験生であれば理解しているべき判例です。肢の2は難しいですがそれがわからなくても、正解を導くことはできますね。

まずは足の3、4、5の条文をご確認いただき、肢の1の判例を確認しましょう。

肢の2はこの解説を参考にしていただければ十分です。

頑張ってください!

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