本試験問題にチャレンジ!
こんにちは。資格の大原行政書士講座専任講師の松井です。
このコーナーでは、過去の行政書士試験で出題された問題をピックアップしてご紹介しています。
記事の後ろの方に解答と解説を載せますので、クイズ感覚でチャレンジしてみてください。
■■■ 平成28年 問題7 ■■■
法の下の平等に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、下記の選択肢の正誤を判断してください。
3 法定相続分について嫡出性の有無により差異を設ける規定は、相続時の補充的な規定であることを考慮しても、もはや合理性を有するとはいえず、憲法に違反する。
いかがでしょうか?
正解は「○」です。
この選択肢は最大決平成25.9.4をもとにして作成されたものです。
民法900条四号(当時)は、「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。
ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1と……する」と定め、嫡出でない子(非嫡出子)の法定相続分を嫡出である子(嫡出子)の2分の1としていました。
そのため、本規定が憲法14条1項に反するのではないかが問題となっていたのです。
判例は、諸般の事情を考慮し、「遅くとも(被相続人)Aの相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子(非嫡出子)の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。
したがって、本件規定は、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたものというべきである」としました。
これを受けて、平成25年12月に民法900条四号が改正され、嫡出子と非嫡出子の相続分差別の規定は削除されました。
嫡出子と非嫡出子の相続分は同一となりました。
憲法の判例に関する問題ですが、内容は民法の制度についてのものです。
憲法の判例を学習しながら、同時に民法の条文も確認し、同時に2科目を復習しましょう。
しかも親族・相続の条文は手薄になりがちなところではないですか?
これを機会に親族・相続も強くなりましょう!
憲法と民法を同時に学習!!
では、次の問題も憲法と民法の両方に関する問題です。
■■■ 平成28年 問題7 ■■■
法の下の平等に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、下記の選択肢の正誤を判断してください。
5 父性の推定の重複を回避し父子関係をめぐる紛争を未然に防止するために、女性にのみ100 日を超える再婚禁止期間を設けることは、立法目的との関係で合理性を欠き、憲法に違反する。
いかがでしょうか?
正解は「○」です。
本問は最大判平成27.12.16の判例をもとにして作成されました。
平成27年の判例が28年に出題されていますね。
民法の条文の改正も伴っていますから、判例を読みながら民法の制度がどのように改正されたのか、確認しましょう。
民法733条1項(当時)は、「女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない」と定め、女性についてのみ6か月の再婚禁止期間を設けていました。
そのため、本規定が憲法14条1項に反するのではないかが問題となっていました。
判例は、諸般の事情を考慮し、
「本件規定のうち100日超過部分は、遅くとも上告人が前婚を解消した日から100日を経過した時点までには婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものとして、その立法目的との関連において合理性を欠くものになっていたと解される」
とし、民法733条1項の規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は、平成20年当時において、憲法14条1項、24条2項に違反するに至っていたとしました(最大判平成27.12.16)。
これを受けて、平成28年6月に民法733条が改正され、再婚禁止期間が前婚の解消又は取消しの日から起算して100日に短縮されるとともに、再婚禁止期間内でも再婚することができる場合が明らかにされた。
裁判で問題となった背景から、判決、制度改正という流れが理解できると理解が深まりますね。