【記述対策】予想問題:行政法3
Aは、B県内で飲食店を営業しているが、B県知事は、Aが食品衛生法所定の営業停止事由に該当するとして、Aに対して営業停止処分及び名称等の公表を行おうとしている。これに対し、Aは、これは事実誤認に基づくものであり、当該処分がされることにより名誉や信用が著しく傷つけられ重大な損害を生ずるおそれがあるため、当該処分を回避するための訴訟を提起することを検討している。Aがこのような訴訟を提起するためには、B県知事が当該処分をしてはならない旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有しており、当該処分がされる蓋然性があることのほか、どのような訴訟要件を満たす必要があるか。また、Aが提起すべき訴訟は、行政事件訴訟法上、何と呼ばれているか。40字程度で記述しなさい。
ここで解答が見えないように
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1.正解例
重大な損害を避けるため他に適当な方法がないことが必要であり、差止め訴訟と呼ばれる。(41字)
2.解説
(1) 問題文の検討
本問の場合、
「Aがこのような訴訟を提起するためには、・・・どのような訴訟要件を満たす必要があるか。また、Aが提起すべき訴訟は、行政事件訴訟法上、何と呼ばれているか。」
とある。
このことから、本問では、Aが営業停止処分及び名称等の公表を回避するための訴訟を提起するための訴訟要件と、Aが提起すべき訴訟の名称を書けばよいことがわかる。
(2) 差止め訴訟
行政事件訴訟法37条の4第3項 差止めの訴えは、行政庁が一定の処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。
最判平成24.2.9 法定抗告訴訟たる差止めの訴えの訴訟要件については、まず、一定の処分がされようとしていること(行政事件訴訟法3条7項)、すなわち、行政庁によって一定の処分がされる蓋然性があることが、救済の必要性を基礎付ける前提として必要となる。
差止め訴訟を提起するには、次の訴訟要件を満たす必要がある。
① 一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがあること(損害の重大性)。
損害の重大性が認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法
によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要する(最判平成24.2.9)。
② その損害を避けるため他に適当な方法がないこと(補充性)。
③ 一定の処分がされようとしていること(処分の蓋然性があること)。
なお、非申請型義務付け訴訟と異なり、補充性は消極要件となっている(行政庁側が補充性が満たされていないことを証明する責任を負う)。これは、差止め訴訟の場合、損害の重大性を満たせば、通常は、補充性も満たされる(補充性が満たされないのが例外である)からであるとされている。