【記述対策】予想問題:民法3
Xは、Yとの間で、Y所有の絵画の修復について請負契約を締結し、その絵画の修復を完了させた。しかし、期日になっても修復に係る代金の支払を受けていない。その後、Xは、Yから「美術館から出品の依頼があったので、絵画を一旦返還してほしい」という請求を受けた。この場合、Xは、代金の支払を受けるまでは、Yに対して2つの権利を主張し、絵画の返還を拒否することができる。また、それらの権利を行使する意思が訴訟上表明された場合、裁判所は、Y敗訴の判決ではなく、X・Y双方に対して債務の履行を命じる判決を出すことになる。Xはどのような権利(2つ)を主張することができ、また、裁判所が出す判決は何と呼ばれるか。40字程度で記述しなさい。
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1.正解例
Xは留置権又は同時履行の抗弁権を主張することができ、引換給付判決と呼ばれる。(38字)
2.解説
(1) 問題文の検討
本問の場合、
「Xはどのような権利(2つ)を主張することができ、また、裁判所が出す判決は何と呼ばれるか」
とある。
このことから、本問では、
①Xが主張することができる権利(2つ)
②権利を行使する意思が訴訟上表明された場合に、裁判所が出す判決の名称
を書けばよいことがわかる。
(2) Xが主張することができる権利
まず本問では、「Xは、Yとの間で、……請負契約を締結し、その絵画の修復を完了させた。
しかし、期日になっても修復に係る代金の支払を受けていない」とある。請負契約における報酬の支払と目的物の引渡しとは同時履行の関係にあるとされている(大判大正5.11.27)。
したがって、本問の事案では、Xは、代金の支払を受けるまでは、Yに対して同時履行の抗弁権を主張し、絵画の返還を拒否することができる(民法533条)。
また、Xの報酬請求権は、「その物(絵画)に関して生じた債権」にあたり、絵画と報酬請求権の間には牽連性が認められる。したがって、Xは、代金の支払を受けるまでは、Yに対して留置権を主張し、絵画の返還を拒否することができる(民法295条)。
よって、本問の場合、Xは、Yに対して、留置権と同時履行の抗弁権を主張することができる。
(3) 判決の名称
物の引渡請求に対して留置権が主張された場合や、債務の履行の請求に対して同時履行の抗弁権が主張された場合には、原告敗訴の判決ではなく、原告の債務の履行と引換に被告に債務の履行を命ずる判決が出される(最判昭和33.3.13、大判明治44.12.11)。
この判決は、引換給付判決と呼ばれる。